ラムサールエリア【概 要】
 厚岸町は漁業が基幹産業の町で、多くの漁業従事者がいます。厚岸湖では、カキとアサリの養殖が盛んなほか、冬期はチカやコマイなどの氷下待網漁が盛んです。
 また厚岸湖周辺の道有林ではトドマツの植栽が、別寒辺牛川中流域より上流側の国有林では、パイロットフォレストによるカラマツの植栽が盛んです。また別寒辺牛湿原の東西に、それぞれ酪農地帯があります。

<水鳥の重要な生息地としての厚岸湖・別寒辺牛湿原>
 別寒辺牛(ベカンベウシ)湿原とは?
 アイヌ語の「ベカンベ」とは、水草である菱(ヒシ)の実を表します。「ウシ」とは、〜のたくさんあるところ、という意味です。
 つまり、あわせて「ヒシの実のたくさんあるところ」という意味になるのですが、残念ながら現在ヒシの実を見ることは出来ませんし、昔のアイヌの記録でも、厚岸にたくさんのヒシの実があったという話を聞きません。
 別の意味で、水上交通の要所、という意味もあるという話もありますが、この河川の名前の由来は、厚岸の地名のなぞの一つになっています。
 平成5年6月にラムサール条約登録湿地となった厚岸湖・別寒辺牛湿原は、国内有数の原生的な自然が残された湿原で、全体の面積は約8,300haにのぼります。これは釧路湿原の実際の湿原面積約16,000haの半分に相当し、東京ドームにして約1,600個分にもなりますが、そんなに広く感じないですよね?
 というのも図のように、本流の他、山間を縫うように網の目のように広がったチライカリベツ、トライベツ、フッポウシ川などの支流それぞれに湿原が発達し、非常に複雑な形になっているため、一度に見渡せないからなのです。
 このうち4,896haが登録当初の面積でしたが、平成17年11月にウガンダで開催された第9回締約国会議において、381haが追加され、厚岸湖・別寒辺牛湿原の登録湿地面積は5,277haになりました。
 厚岸湖は、別寒辺牛湿原の下流に位置する汽水湖で、湖面が冬でも全面結氷することが少なく、オオハクチョウが約1万羽以上中継地として湖を利用し、そのうち厚岸湖の結氷具合に応じて1,000羽から3,000羽が越冬する国内有数の中継地・越冬地であります。
 また厚岸湖岸、別寒辺牛川下流域、中流域、各支流の湿原で、例年約40つがい以上のタンチョウが繁殖している国内有数のタンチョウ繁殖地でもあります。
 そのためこの登録湿地は、「東アジア・オーストラリア地域渡り性水鳥重要生息地ネットワーク」に参加し、タンチョウの重要な生息地として「北東アジア地域ツル類重要生息地ネットワーク」、またカモ類の重要な中継地、越冬地として「東アジア地域ガンカモ類重要生息地ネットワーク」に参加しています。

<湿原の植生的な特徴(低層から高層湿原)>
 厚岸湖に注ぐ別寒辺牛川河口をはじめ、そのほとんどは典型的な低層湿原で、ヨシ、スゲ類、ハンノキの群落が広がっていますが、別寒辺牛川中流域において、本流と支流のトライベツ川に囲まれる沖積低地に、発達した高層湿原があり、ガンコウラン、イソツツジ、ヒメシャクナゲなど高山植物の約110haの群落が見られます。
 また小規模な中間湿原あるいはそれに近い高層湿原が数カ所散在しています。

<湿原の植生的な特徴(塩湿地性植物群落)>
 汽水湖である厚岸湖湖畔には、アッケシソウなどの塩湿地性植物群落が点在しているほか、潮汐活動により潮の影響を受ける河川河口域においても、スゲ類などに特徴的な種構成が見られます。

<地質、地史的特徴>
 厚岸湖周辺は、約6,000年前から縄文人、中世よりアイヌ民族によって生活の場とされてきました。今でも遺跡や石器、土器などが数多く発掘されます。
 また湿原の泥炭の保存状況が良く、周辺環境の古環境復元に非常に役立っています。

【特記すべき植物】
<塩湿地性植物群落>
 アッケシソウ(絶滅危惧ⅠB類(EN)) 塩湿地性植物群落に生育し、その分布は北海道東部沿岸域と瀬戸内海沿岸部の一部など非常に限られます。この群落には、シバナ、ヒメウシオスゲ、ウミミドリ、エゾツルキンバイ、チシマドジョウツナギ、エゾハコベ、ウシオツメクサなどの希少種が混在します。

<高層湿原>
 オオミズゴケなどからなるミズゴケ群集 (絶滅危惧Ⅰ類及び絶滅が危惧される群集)
このミズゴケ群集上に、ガンコウラン、ヤチツツジ(絶滅危惧ⅠB類(EN))、イワノガリヤス、イソツツジ、ヒメシャクナゲなどが群落を作っています。

【特記すべき動物】
<鳥 類>
 厚岸町で確認されている鳥類約200種のうち、汽水域、河川、湿原を利用している種は約110種類

  • <哺乳類>
  • <魚 類>

    ラムサール条約

     「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」が昭和46年にイランのラムサールという都市で採択されたことからそう呼ばれている。
     条約は、水鳥をはじめとする野生動物の生息地となっている湿地を、国際的な協力のもと保護・保全し、賢明に利用する(ワイズユース)のことを目的としている。


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