これは平成16年(2004年)2月13日、かつて一番ワシたちが集まっていた時期の厚岸湖の様子です。
白いところが氷が張るところです。年によって、また厳冬期でも雪の量などでこの白い部分は大きく変化します。
オジロワシは厚岸湖周辺では年中見られ、オオワシは10月後半より見られるようになりますが、本格的に見られるようになるのは氷が張ってからです。
なぜ氷が張るとワシ類が多くなるのでしょうか?
厚岸湖に氷が張るようになると氷下待網漁という漁が始まるのですが、その漁のおこぼれをもらうためにやってくるのです。そのため、漁師さんたちの周りにはワシ類がいっぱいやってきています。
毎年これら海ワシ類は非常に多く数えられ、平成15年3月には過去最高354羽が確認されました。
いつ頃からか、氷下待ち網漁の雑魚をその場に放置せず、魚肥などの原料として売るようになったため、海ワシの餌は減ってきているのです。
以前は300羽越えの日が当たり前のようにありましたが、ここ数年そういう状態にはならず、多くてもシーズン最大150羽程度の年が続いています。
ただ、これが決して良いか悪いかというと非常に難しい問題になります。そもそもオオワシ・オジロワシの餌を漁業系廃棄物に頼らせて良いのか?それともそれは仕方が無いのか?
また、エゾシカのハンティングについて、北海道では現在鉛弾の使用も所持も禁止されていますが、現在も使用している人がいまして、鉛の破片を体内に残したまま放置されるエゾシカ死体があるのです。その死体を食べることによる鉛中毒が後を絶ちません。
このようなハンターがいる限り、エゾシカ残滓にワシが集まるといった状況を作ることは好ましくなく、前記した漁業系廃棄物を食べている方がマシかとも思ってしまいます。
しかしこの双方とも根本的な解決ではなく、彼らが自力で本来の餌を食べることを考えた場合に、北海道にやってくる海ワシたちの天然の餌資源が残っているかと考えると、これまた非常に悩ましくなってきます。
かといって、人為的に餌付けを行うと馴化してしまい、人との距離が縮まることによる余計な事故を発生させる原因ともなっています。
北海道における海ワシの置かれている状況は常に綱渡りなのです。
最近の情報(令和6年度)
2025年2月 観察館半径5km以内にオジロワシ5つがいが繁殖していますが、観察館から様子が何とかわかる2つの巣は、親が巣の整備を始めています。
2024年12月〜1月 順調にオオワシ、オジロワシが渡ってきていたが、1月6日まで例年どおりに寒くなっていたのが翌7日から急激に気温が上昇。一度凍った氷も徐々に薄くなり、1月24日に厚岸湖の氷が一気に剥がれてほとんどの氷が消滅。氷下待ち網漁も出来ない状態になり、おこぼれをもらうはずのワシたちが集まらなくなった。そのため今季は非常に少ない。
厚岸水鳥観察館 E-mail: