海ワシ類の受難(その1)

 平成8年度の冬から、厚岸湖周辺にやってくる海ワシ類(オオワシ・オジロワシ)を観察していますが、今年はいろんな意味で大変な冬でした。氷上の数キロ離れたワシ類を高倍率のスコープで観察するのは実に大変な作業でして、オオワシ・オジロワシの区別(平均してオオワシの方が大きい、嘴の形が違うなど)、成鳥・幼鳥の区別(オオワシ成鳥は肩が白い、幼鳥はどちらも同じ)をつけながら数えるのですが、氷上の物体は全て逆光、特に晴天時にはシルエットによる特徴以外区別が非常に困難になってしまいます。

 それも、今年の3月は想像していた以上に湖内の氷がしぶとく残り、氷下網漁も随分遅くまで可能だった関係で、そのおこぼれをもらうワシ類も随分遅くまで残っていました。その結果数えられたのが、3月3日の299羽を最高に、2月〜3月中は結局最後の週を除いてほぼ200羽前後で推移していました。これは昨年度数えた数の2〜3倍になります。もう大変な作業です。

 さて、厚岸湖周辺に飛来してくる海ワシ類は3年間の記録だと増加傾向にあります。年による結氷率の違いもありますので、今後この傾向が続くかどうかは分かりません。しかし、この状態、あまり手放しで喜んでもいられない事情が色々あります。

 そもそも、海ワシ類がなぜ人間の生産活動に依存するようになってきたのか?それは、自然の状態で餌を確保することが出来なくなってきたから。そして自然の餌を探すより楽な方法があったから。それは始め、スケソウ漁で賑わっていた羅臼近辺で起こりました。スケソウのおこぼれです。それも十数年前頃から不漁になり、次に依存するようになったのは氷下網だったんです。

 もし近年の暖冬傾向が更に進み、厚岸湖にあまり氷が張らなくなってきたら次に当てにしないといけないものは...それとも、せっかくシベリアから日本にやってきたのに餓死?(来月に続きます)