別寒辺牛湿原の特徴(前編)
湿原の中を時間をかけてゆっくり流れている川。一般的に湿原の中を流れる川は、高低差があまりないため非常にゆっくりした流れになっています。そしてその多くは、蛇行しながら海に注いでいます。
ところが、この別寒辺牛川本流はちょっと変わった特徴を持っています。
厚岸湖が厚岸湾(海)と直接つながっている汽水湖であることは説明するまでもありませんが、このため湖内には、海水が朝夕運動により自由に出入りしています。その影響は、本流では別寒辺牛川の河口から約5〜6km上流の国道44号に架かる別寒辺牛橋辺りにまで及んでいます。
また別寒辺牛川河口部は、両側を山林に囲まれているため他の湿原に比べても河川氾濫源が狭いため、干満の影響が顕著に現れます。その結果、川は定期的に逆流し、大潮時には最大約150cmほどの潮位差ができる環境になっています。もちろん、最大満潮時には湿原の大部分が水没してしまいますが、幸い厚岸町においては、河川氾濫源に住居が存在しないため、都会などに見られるような洪水は起きません。
このような水の出入りを繰り返すうちに、河口周辺は単純な水の通り道としての川ではなく、逆流する水を逃すかのように網の目上に発達した迷路状の水路が湿原内に多数走るようになっています。そしてこの網の目上の水路は、実は水鳥を始め様々な生き物の非常によい生息地、そして隠れ家になっています。
一般的に釧路湿原、霧多布湿原のように、北海道東部の大規模な湿原は海岸性の湿地と呼ばれていますが、同じ海岸性の湿地でも別寒辺牛湿原は上記した特徴以外にも、その湿原発達の過程においても大きな違いがあります。
これは次回に掲載することにします。