厚岸湖に注ぐ別寒辺牛川本流の全長は約52kmと言われており、釧路川より東側では一番大きな川です。この別寒辺牛川も、支流なども含めると更にこの何倍もの長さになり、その流域約8,200haに湿原が発達しています。
さて、この川や湿原を潤している水はどこからやってきているのでしょう?
もちろん最初は雨水や雪解け水ですね。それら水は、川や湿原の真上だけでなくあらゆる所に降っていますよね。
それでは、この降ってきた雨水のその後は?
厚岸も含めて道東太平洋側にはあまり高い山が無いかわりに、割と低い丘陵地帯がかなりの面積で存在します。その丘陵地帯に降り注いだ雨水などは、蒸発して再び空気中に戻るものを除けば、一部は地表を伝って、残りは地下に浸透していきます。
地表を通過するときには、落ち葉や枯死木の腐ったものなどがスポンジの役割をしているために、ちょうど家庭用の浄水器のように浄水・水質調整され、流れ出る水量も調整されて地下に浸透し、一部は地表を伝って湿原にまで下っていくのです。
浸透していく途中に更に土壌によりろ過されながら、水を通しにくい地層に当たれば、そこで止まって山の斜面や麓など地表に近い部分から湧き出てきます。これが湧水(湧き水)です。
更に深く浸透するものもあり、それは地下水として利用している人も多いと思います。
湿原は必ず山と接しています。その接点全てが水源地になっており、道東の湿原を潤している水の多くが実は山から伝ってきた、あるいは湧き出てきた水なのです。
ようやく湿原にまで出てきた水、更に植物残渣や泥炭などの堆積物を通過し、ヨシやスゲの植物に阻まれ、ゆっくり滞留しながら、余分な有機物は微生物などによって消費され、更に水質調整・流量調整されながら川を下っていきます。
ところがですね、都市というものはそもそも氾濫源を開発してそこを利用しているわけで、そこはもともと洪水時の遊水池だったわけだから、高い堤防を作らなければならないし、とかく洪水には悩まされなければならない。しかも、周辺森林の伐採などにより健康な土壌も存在せず、水質を守る機能も水量を調整する機能もなくなっているところも多い。つまり水は一気に下流に流れ出て必要なときには水不足、オマケに水質も悪いときたら、さぞかし住み難いだろうなぁと想像はつきますよね。
たまたま残っていた道東の湿原、こう考えるとなんて幸せなところに住んでいるのだろうと思いません?