どう猛なハシブトガラス

 ハシブトガラスは体長約56cmの全国で見られるその名の通りカラスの仲間です。実は、私達の身の回りにいるカラスは主に“ハシブトガラス”と“ハシボソガラス”という2種類のことを指しまして、それらをまとめて“カラス”と呼んでいます。それぞれ形態や行動、生活様式が若干異なります。

 ハシブトガラスは非常に野生味の強いカラスで、森林内や人間の産業活動のない場所、厚岸町では湿原内でも、年間通してごく一般的に見られる野鳥です。このカラスは、少し大型でくちばしが太く、おでこが出っ張っているのが特徴です。北海道海岸部ではハシブトガラスの勢力がわりと強いようです。

 一方、ハシボソガラスはハシブトガラスよりは明らかに体が小さく、くちばしが細くスマートに見えます。人家周辺でも非常にごく一般的に見られるカラスです。

 冬に、病気や事故で死亡した動物の肉をオオワシやオジロワシに混じって食べているのはハシブトガラスの方です。性格はどう猛で、初夏の繁殖期に、近づいてきた人間を襲うのも普通ハシブトガラスの方です。この行為は自分の巣の近くに外敵がやってきたということでカラスにとってみれば当然の行為なのですが、ハシボソガラスの方はそこまでの行動には出ないようです。

 一般的に、ハシブトガラスの方が澄んだきれいな鳴き声で鳴き、ハシボソガラスの方がガーガーとうるさい声で鳴くのですが、カラスは非常に頭のいい野鳥で、仲間に何らかの意志を伝えるなどの音声による社会的なコミュニケーションも多数確認されており、その言葉を理解するだけでも結構興味がわいてくる野鳥です。また、貝を道路などの堅いところに落として割ったり、線路に置き石をしたり、連係プレーで集団で狩を行うなど、厚岸も含め全国各地で見られる非常に有名な行動も多々あります。

 どちらのカラスも人間の生活と深い関わりを持っている野鳥ですが、本来はトビなどと同じように掃除屋としての役割も持っている野鳥です。ところが上記したように非常に頭がいいため人間側がゴミなどを粗末に扱っているとこれらカラスは雑食のため確実にそれらゴミを狙ってきます。特に都心部でカラスが異常に増えているのはそのためで、これは別に都心部に限ったことではありません。どこでも起こりうることなのです。実はこれらカラスが増えると、他の野鳥や小動物の繁殖が抑えられてしまいます。カラスが他の野鳥や小動物の卵やヒナなどを食べてしまうからです。カラスに限らずオオセグロカモメ、キツネなども人間側のゴミの不始末によりその地域の生活習慣や生態系を崩しててしまう例は多数あります。特にカラスはその頭脳の明瞭さからずば抜けた適応力を発揮していますが、これらの結果が人間の生活にも悪影響を及ぼしていることは言うまでもありません。

 その行動は、見ていると憎たらしいこともありますが、じっくり観察してみると非常に面白く、ひょうきんで頭のいいカラスです。その存在理由と行動を人間も考えなければなりませんね。