Vの字飛行のチュウヒ

 チュウヒは、湿原を代表する猛禽類(ワシタカの仲間)です。体長は48〜58cmくらいで、ふだんよく見かけるトビよりは一回り以上小さい鳥です。しかし、翼と尾羽が長いため実際は少し大きく、トビと同じくらいの大きさに見えます。

 中国北部から東南アジアのあたりまで幅広く分布します。日本全体では主に冬鳥なのですが、北海道では主に夏に見られ繁殖もしています。湿原以外ではほとんど見られることのない鳥で、ヨシの中や農耕地でネズミや鳥のヒナ、両生類や昆虫など様々な小動物を食べています。

 チュウヒは、いくつかの異なった模様のグループに分けられ、町内で観察されるほとんどのものが国内型と呼ばれるからだ全体が焦げ茶っぽく、胸から頭にかけて明るいクリーム色をしているチュウヒです。飛翔しているときにはそのクリーム色の部分がよだれかけのように見えるのが特徴です。

 生息している場所がほとんど湿原のため、地面に降りているチュウヒを見かけることはあまりありませんが、翼をVの字に曲げて、それほど高くないところを風に乗ってひらひらと湿原を舞うように小回りに旋回しながら時にはVの字のままほとんど羽ばたかず移動している姿をよく見かけます。この飛翔方法が非常に特徴的で、その姿を見れば、翼を横に真っ直ぐ開き、上空を大きく旋回しているトビとは明らかに違うことがわかります。

 一昨年前は、抱卵中のタンチョウがシカに気を取られている間に、チュウヒが2つあるタンチョウの卵のうち1つを食べてしまった事件もありましたが、それも自然の摂理なのでしょう。ただ、チュウヒは生きている獲物を捕らえるには少々頼りなく、当人にはいつもその気はあるようなのですが、周りの大人の水鳥達には「また鬱陶しいのがやってきたな」程度にしか思われておらず、いつも驚かす程度で終わっています。それでも、いつもゴミをあさっているトビに比べるといい方?

 観察館でもこれから頻繁に、チュウヒの獲物を捕らえようとひらひらと湿原を舞う姿が見られるようになります。これから暖かくなり、湿原の近くに足をとめることがありましたらゆっくり眺めてみてください。ほんとにじっくり見ないと出会えないこともありますが、どの湿原にもたぶんチュウヒがひらひらと舞っているでしょう。