黄色い鼻筋のヒドリガモ

 ヒドリガモは体長約49cmのカモの仲間で、マガモよりは一回り小さく、首も短めです。ユーラシア大陸北部に普通に繁殖しているカモで、日本全国に冬鳥としてやってきます。

 ヒドリガモの最大の特徴は、その雄の黄色い鼻筋です。首全体が明るい橙色をしており、また胸も淡いピンク色をしているのでこれだけでも結構目立つのですが、鼻筋の黄色の部分が直射日光を浴びるとひときわ目立つようになります。雌は、他のカモの例にもれず相変わらず地味です。また、マガモなどは結構意地悪そうな目をしていますが、ヒドリガモなどの小型のカモはつぶらな非常にかわいらしい目をしているので、色彩とも相成って上品に見えます。

 厚岸の別寒辺牛川や厚岸湖には、9月始めあたりから渡来し始めるのですが、ここで識別する人間にとって困ったことが起きます。実は、カモの仲間は、晩夏から初秋にかけて雄が雌の羽の模様になってしまうのです。これをエクリプスといい、この時期にやってくる、マガモ、コガモ、ハシビロガモ、オナガガモなど(カルガモを除く)ほとんどのカモがこのエクリプスの状態でやってきます。もともと、カモは雄の羽の色などで区別することが多いので、初心者には何がなんだか全くわからなくなってしまいます。しかし慣れてくると、体の大きさ、目の表情、種ごとのエクリプスでの羽の違い、行動などで瞬時に判断できるようになります。

 これから寒くなるにしたがってオオハクチョウがやってくるようになると、ヒドリガモは又別の面白い行動をするようになります。ヒドリガモは主に水草などを食べていますが、潜ることができないので普段は浅瀬で採餌しています。ところが、オオハクチョウがやってくると深いところの水草を引っ張り上げるため、おこぼれが水面に浮いてきます。そのおこぼれを狙ってヒドリガモが集まるのです。注意して見てみて下さい。オオハクチョウがお尻を上げて深いところのアマモなどを食べている周辺には必ずヒドリガモがいます。