厚岸地域平野郎を利用するヒグマの生態
日本大学大学院 生物資源科学研究科 森林動物学研究室 中村 秀次



 ヒグマ(Ursus arctos)北半球に広く分有し,日本では北海道のみに生息する.北海道のほぼ全域に生息するが,天塩・増毛,および積丹・恵庭(石狩西部)に存在する2個体群は北海道の絶滅のおそれのある野生生物(http://rdb.hokkaido-ies.go.jp/)および環境省レッドリスト(http://gnome24.com/nature/redlist/redlist.html)において保護に留意すべき地域個体群に指定されている.また一方で,ヒグマは日本で最大の食肉目の陸生哺乳類であり,大きく,鋭い牙と爪を持つ故に日本に生息する他の野生動物と異なり,農業被害のほかに,人身被害も問題とされ,生態系保全と,人身事故・農業被害防止の両面から,保護管理が必要となってくると予想される.野生動物の保護管理を行う上で,生息頭数や生息域,食性など,対策を考える上では地域ごとのヒグマ生態を把握することは必要不可欠である.

 厚岸地域は、別寒辺牛湿原を中心に広く湿原、湖沼と森林を保有し、他の山間部を主とする他の生急減とはやや趣が異なる。また、道東地域おけるヒグマの高密度生息地域といわれているものの、大まかな分布情報以外の情報が得られていない。

 そこで今回,厚岸地域のヒグマの食性,生息域の概要を明らかにするため,痕跡調査を主とした生態調査を実施した.

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